妊娠中は赤ちゃんに影響する可能性があるため、食事には気を使いますよね。アルコールや刺激物、生ものなどは妊娠中は避けた方がよいと言いますが、コンビーフはどうなのでしょうか。
この記事では、コンビーフを妊娠中に食べても問題ないのか、また、食べる場合はどのような点に注意をすればよいのか、詳しく解説します。
Contents
コンビーフを妊娠中に食べても良い?おなかの赤ちゃんに影響はないの?
コンビーフは牛肉の加工品です。加工品は何が入っているのかわかりづらいため妊娠中に食べてもよいものかどうか不安になりますよね。コンビーフは妊娠中に食べても問題はないのでしょうか?
そもそもコンビーフってどんな食材なの?加熱はしてあるの?
コンビーフには、スーパーなどで販売されている缶詰めのタイプと、デパ地下などで販売されているレトルトタイプのものがありますが、基本的にはどちらも同じような材料と製造方法で作られています。
参考までに、『ノザキのコンビーフ』の原材料を見てみましょう。
牛肉(オーストラリア又はニュージーランド又はその他)、牛脂、植物油(大豆を含む)、食塩、ゼラチン、砂糖、寒天/カゼインNa(乳由来)、調味料(アミノ酸等)、酸化防止剤(ビタミンC)、発色剤(亜硝酸Na)
主原料は牛肉ですね。コンビーフは塩漬けにした牛肉を蒸煮してから細かくほぐし、牛脂や調味料と合わせて味付けをして、容器に詰めてから再度加熱殺菌をして出荷されています。
妊娠中にコンビーフを食べても問題ない?
結論から言うと、妊娠初期、中期、後期にかかわらず、基本的に妊娠中にコンビーフを食べることは可能です。
食べる量や栄養バランスなど、食べ方に気を付けるべきポイントは多少あるものの、妊娠中にコンビーフを食べたからといって特に問題になるようなことはありません。
衛生面や食べ方に注意さえすれば、コンビーフ自体が母体や胎児に直接影響を及ぼすようなことはないので、安心してくださいね。
添加物が多いから食べない方がよいって本当?
コンビーフの原材料表示を見ると数種類の添加物が使用されています。例えば、ノザキのコンビーフに使用されている添加物の内訳は以下の通りで、コンビーフの変質を防いだり味や品質を向上させたりする目的で使用されています。
・カゼインNa:牛肉と脂肪が分離しないようにする乳化剤
・調味料(アミノ酸等):うま味調味料
・酸化防止剤(ビタミンC):牛脂などの油の酸化を防ぐ
・発色剤(亜硝酸Na):肉本来の赤色を維持する
コンビーフだけでなく、ウインナーやベーコンなどの食肉加工品にも同じような添加物が使用されていますが、これらの添加物が胎児に悪影響を与える可能性はあるのでしょうか?
食品添加物は、生涯毎日食べ続けたとしても健康に悪影響がないと考えられる「許容一日摂取量」に基づいて使用基準が決められています。また、食品安全委員会(※)も、通常の食生活をしている限り、食品添加物が原因で胎児や妊婦に悪影響が出ることは考えられないという見解を示しています。
ですから、コンビーフを常識的な範囲で食べる分には、妊娠中でも特別神経質になる必要はないでしょう。
※食品安全委員会:食品の安全を守るために、行政とは独立した中立公正な立場で食品のリスク評価をする機関
コンビーフにリステリア食中毒の心配はないの?
妊娠中の食事に関する書籍やインターネット記事などを見ていると、「リステリア菌」という文字をしばしば目にします。
リステリア菌は河川の水や動物の腸管内などに広く分布している細菌で、乳製品や食肉加工品などを介して食中毒の原因になることがまれにあります。
リステリア菌は健康な成人であれば相当数を摂取しないと発症しません。万一発症しても健康な人なら軽症ですみますが、妊婦は少量でも発症して重篤化することがまれにあるために注意が必要です。
国内での妊婦のリステリア感染症は10万人に3人程度とまれですが、妊婦が感染すると胎児にも感染して、流産の原因や生まれた新生児に影響を及ぼすことがあります。
・生ハムなどの非加熱の食肉加工品
・未殺菌乳、ナチュラルチーズなどの非加熱の乳製品
・スモークサーモンなどの非加熱の魚介類加工品
リステリア菌は他の多くの食中毒菌と同じように、75℃以上1分の加熱でほとんど死滅します。市販のコンビーフは加熱処理及び殺菌処理がされているため、基本的にはリステリア食中毒のリスクはないと言えます。
コンビーフは妊娠中の栄養に影響する?メリットと注意点は?
妊娠中にコンビーフを食べること自体は特に問題ありませんが、他の食品と同様に食べる量や栄養バランスなどによっては、お母さんの身体やおなかの赤ちゃんに影響する可能性があります。コンビーフを妊娠中の食べることのメリットや注意すべきポイントについて解説します。
妊娠中の食生活のポイントとは?
妊娠中は通常と同じように、バランスよく栄養を摂取することが最も大切ですが、お母さんの身体の健康と胎児の成長のために、下の表のように普段よりも多く摂らなければならない栄養素がいくつかあります。
栄養素 | 非妊娠期 | 妊娠初期 (付加量) | 妊娠中期 (付加量) | 妊娠後期 (付加量) |
---|---|---|---|---|
エネルギー(kcal) | 2000~2050 | +50 | +250 | +400 |
たんぱく質(g) | 50 | 0 | +5 | +20 |
マグネシウム(μg) | 270~290 | +40 | ||
鉄(mg) | 6.5 | +2.5 | +9.5 | |
亜鉛(mg) | 8 | +2 | ||
ビタミンA(μg) | 650~700 | 0 | 0 | +80 |
ビタミンE(μg) | 5.0~5.5 | 1日に6.5g | ||
ビタミンB1(mg) | 1.1 | +0.2 | ||
ビタミンB2(mg) | 1.6 | +0.3 | ||
ビタミンB6(mg) | 1.1 | +0.2 | ||
ビタミンB12(mg) | 2.4 | +0.4 | ||
葉酸(μg) | 240 | +240 | ||
ビタミンC(mg) | 100 | +10 |
※厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」より
まとめると、妊娠中は摂取カロリーを普段よりも多めに摂ると同時に、鉄、亜鉛、マグネシウム、ビタミンB群を特に意識的に摂る必要があります。また、普段から不足しがちな食物繊維とカルシウムも、妊娠中は特に意識的に摂ることが大切です。
コンビーフの栄養は肉やベーコンと比べるとどう違う?
コンビーフは、肉やベーコンなどと同じような使い方をする食材ですよね。では、肉やベーコンと比べると栄養的にはどうなのでしょうか。1食にそれぞれ50gを食べた場合の栄養素を比較してみましょう。
栄養素 | コンビーフ 50g | ベーコン 50g | 牛もも肉 50g | 豚もも肉 50g | 妊婦の 1食分の 目安量 |
---|---|---|---|---|---|
エネルギー(kcal) | 96 | 122 | 98 | 86 | 750~767 |
たんぱく質(g) | 9.9 | 7.7 | 9.8 | 10.3 | 23 |
脂質(g) | 6.5 | 9.7 | 6.7 | 5.1 | 14~23 |
マグネシウム(μg) | 7 | 8 | 11 | 12 | 103~110 |
鉄(mg) | 1.8 | 0.2 | 0.7 | 0.4 | 5.7 |
亜鉛(mg) | 2.1 | 0.7 | 2.3 | 1 | 3.3 |
ビタミンE(μg) | 0.4 | 0.3 | 0.3 | 0.2 | 2.2 |
ビタミンB1(mg) | 0.01 | 0.27 | 0.04 | 0.45 | 0.4 |
ビタミンB2(mg) | 0.07 | 0.06 | 0.1 | 0.11 | 0.6 |
ビタミンB6(mg) | 0.02 | 0.1 | 0.16 | 0.16 | 0.4 |
ビタミンB12(mg) | 0.7 | 0.2 | 0.6 | 0.2 | 0.9 |
葉酸(μg) | 3 | 1 | 5 | 1 | 53 |
食塩相当量(g) | 0.9 | 1.3 | 0.1 | 0.1 | 2.2 |
※日本食品標準成分表2020年版(八訂)より
コンビーフのカロリー(エネルギー)、たんぱく質、脂質は、食肉加工品のベーコンよりも牛肉や豚肉に近いことがわかりますよね。
妊娠中にコンビーフを食べる栄養的なメリットと注意すべきポイント
コンビーフのミネラルやビタミンはベーコンや肉と比較すると、多いものも少ないものもあります。ビタミン類やマグネシウムは妊婦の1食分の目安に大きく不足していますが、注目すべき栄養素は亜鉛と鉄です。
亜鉛は、コンビーフ50gで妊婦の1食分の目安量の約2/3を摂ることができます。これは、牛肉と同じくらいの量が摂れることになりますよね。
また、鉄はコンビーフ50gで1.8mgと摂取できる量は1食分の目安量の3割程度ですが、鉄分が比較的多いとされる牛肉よりもさらに多くの鉄分を摂取できます。
一方、注意すべきポイントは塩分です。ベーコンやウインナーと同じようにコンビーフも塩分が高めです。妊娠中は妊娠高血圧症を防ぐためにも塩分を摂り過ぎないことが大切なので、コンビーフの食べ過ぎや濃いめ味付けには注意する必要があります。
コンビーフを妊娠中の食事に上手に取り入れるポイントと注意点
常識的な範囲で食べる分には、コンビーフが妊娠中のお母さんの身体やおなかの赤ちゃんに影響を与えることはまずありません。ですから、妊娠中でもコンビーフを食べることはできますが、妊娠中の時期を問題なく健康に過ごすためには、コンビーフを食べる場合は少し注意が必要です。
ここからは、妊娠中の食事にコンビーフを上手に取り入れるポイントと気を付けるべきポイントご紹介します。
妊娠中は栄養バランス良く食べることが大前提
妊娠中は、コンビーフを食べる食べないにかかわらず、栄養バランスの良い食事をすることが大前提です。
普段(非妊娠時)も同じですが、基本的には主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物をバランスよく摂るようにします。
主食:ごはん、パン、麺など
主菜:たんぱく質(肉、魚、卵、大豆製品)がメインのおかず 1品
副菜:野菜、いも類、きのこ、海藻がメインのおかずや汁物 2~3品
+
牛乳・乳製品
果物
さらに、妊娠中期は上記に加えて、主菜、副菜、果物を少し増やすイメージです。さらに妊娠後期は、妊娠中期の食事に主食と牛乳・乳製品も少し増やすイメージで考えるとよいでしょう。
コンビーフは食べ過ぎに注意をして適度に取り入れる
コンビーフは肉類と同じたんぱく質主体の食材なので、使用する量にもよりますが基本的には主菜の材料と考えるとよいでしょう。
妊娠中にコンビーフを食べる場合、食べる頻度や1食あたり何グラムまでというような制限は特にありませんが、食べ過ぎると脂質(飽和脂肪酸)や塩分の過剰摂取につながります。
妊娠高血圧症を予防するためにも、飽和脂肪酸と塩分の摂り過ぎは禁物です。妊娠中にコンビーフを食べる際は、食べる頻度や量に注意をして適度に食べるようにしましょう。
野菜などを組み合わせたメニューを選ぶ
コンビーフだけでは、妊娠中に必要なたんぱく質、ビタミン、ミネラルの量を満たすことができません。妊娠中に必要な栄養素をできるだけバランスよく摂るためには、野菜、きのこ類、いも類、大豆製品、海藻類などと組み合わせたメニューを選ぶようにしましょう。
コンビーフ丼やコンビーフのサンドイッチなどコンビーフと炭水化物を組み合わせるメニューの場合は、野菜をたっぷりと使用した副菜や、具だくさんの野菜スープなどをいっしょに食べるようにするとよいですね。
野菜は生で食べるよりも加熱して食べた方がたくさんの量を食べられるので、煮物、蒸し物、炒め物などできるだけ加熱するメニューを選びましょう。
便秘解消のために水溶性食物繊維を意識的に組み合わせよう!
妊娠中は、ホルモンの変化、水分不足、運動量の減少などが原因で便秘を引き起こしやすくなります。便秘を防ぐために食物繊維をしっかりと摂ることが大切ですが、特に便を柔らかくする作用のある水溶性食物繊維を意識的に摂ることがポイントです。
水溶性食物繊維は、オクラ、モロヘイヤ、なめこ、納豆、海藻などのネバネバ系の食材、根菜類、大麦やオーツ麦(オートミール)、果物などに多く含まれています。水溶性食物繊維は普段から不足しがちなので、妊娠中は特に意識的に取るようにしましょう。
コンビーフを食べる場合も、水溶性食物繊維の多い食材を組み合わせるようにするとよいですね。
妊娠中はできるだけコンビーフを加熱してから食べる
コンビーフは加熱処理がされている食材なので、食べる際は加熱をせずにそのまま食べることもできる食材です。加熱殺菌処理がされているため、開封したてのコンビーフであればリステリア食中毒も基本的には心配ありません。
しかし、調理中や冷蔵庫での保管中に、リステリア菌などの食中毒菌に汚染される可能性はゼロではありません。妊娠中に食中毒を引き起こすと、子宮が収縮して流産や早産の原因となったり、おなかの赤ちゃんに感染してしまうこともあり危険です。
そのため、妊娠中にコンビーフを食べる場合はできるだけ加熱してから食べることが望ましいでしょう。どうしても加熱せずにそのまま食べたい場合は、手指や調理器具をしっかりと洗浄・殺菌した上で、開封したてのコンビーフを使うようにしましょう。
加熱することで余分な脂肪分を落とす効果も!
コンビーフを加熱すると、コンビーフに含まれている牛脂が溶けだします。溶けた牛脂を取り除いてから食べることで余分な脂質(飽和脂肪酸)の摂取を抑えられるので、妊娠中には一石二鳥ですね。
また、加熱することでコンビーフに香ばしさが加わって、加熱しないでそのまま食べ方とは異なる風味も楽しめます。
コンビーフを料理に使う場合は調味料を控えめに!
妊娠中にコンビーフを食べる場合は塩分量に注意する必要があります。妊娠中は塩分の摂り過ぎを防ぐためにも、コンビーフを料理に使う場合は調味料はできるだけ控えめにするようにしましょう。
コンビーフは塩漬けした牛肉を加熱してからほぐし、さらに砂糖などの調味料で味付けがされています。また、牛肉自体に含まれるうま味成分もたっぷりと入っているため、調味料を入れずにそのまま食べても十分においしく食べられます。
妊娠中にコンビーフを料理に使う場合は、追加する調味料をできるだけ減らして、素材の味を活かして調理するようにしましょう。
脂肪分の少ないコンビーフを選ぶ
コンビーフの脂肪分や塩分量は商品によって異なります。妊娠中にコンビーフを食べる場合は、脂肪の量や塩分の量ができるだけ少ないコンビーフを選ぶようにすることも、妊娠中にコンビーフを安心して食べるためのひとつの方法です。
以下に、主要なコンビーフの80gあたりの脂質と塩分の量をまとめました。
商品名 | エネルギー (kcal) | 脂質 (g) | 塩分相当量 (g) |
---|---|---|---|
川商フーズ ノザキのコンビーフ | 176 | 11.6 | 1.2 |
明治屋 コンビーフスマートカップ | 144 | 8.2 | 1.3 |
K&K 国分のコンビーフ | 184 | 13.4 | 1.1 |
千駄木腰塚 自家製コンビーフ | 306 | 27.3 | 1.3 |
スモークハウスファイン 米沢牛コンビーフ | 249 | 21.6 | 1.1 |
塩分量はどのメーカーのコンビーフもだいたい同じくらいですが、商品によって脂質の量が大きく異なります。
例えば、千駄木腰塚の『自家製コンビーフ』や、スモークハウスファインの『米沢牛コンビーフ』は、和牛の牛脂を入れることで和牛のおいしさを出しているため、脂質も多めです。スーパーなどで購入できるコンビーフでは、明治屋のコンビーフが脂質の量が少なめですね。
また、脂質の量をカットした低脂肪タイプのコンビーフも販売されています。低脂肪タイプのコンビーフの80g(1個)あたりの脂質の量は以下の通りです。
商品名 | エネルギー (kcal) | 脂質 (g) | 塩分相当量 (g) |
---|---|---|---|
川商フーズ ノザキの 脂肪分50%カットコンビーフ | 106 | 2.4~5.4 | 1.3 |
明治屋 脂肪の少ないコンビーフ スマートカップ | 95 | 1.2~3.7 | 1.2 |
ホリカフーズ 越後魚沼 脂肪低減 コンビーフ | 99 | 1.6~3.8 | 1.3 |
低脂肪タイプのコンビーフは、どの商品も脂質の量が従来品の50%前後に抑えられています。脂っぽさが少なくサッパリしているので、コンビーフの脂っぽさが苦手な人にもおすすめです。
まとめ:妊娠中でもコンビーフを食べてOK!食べる量や栄養バランスに注意!
コンビーフは製造過程で加熱処理や殺菌処理をされているので、基本的にはリステリア食中毒等のリスクはないため妊娠中でも問題なく食べられます。
また、コンビーフは牛赤身肉よりも鉄分が多い食材です。妊娠中は普段以上に鉄分をたくさん摂る必要があるため、コンビーフを上手に活用するとよいでしょう。
ただし、コンビーフは塩分や脂質(飽和脂肪酸)が多く含まれているため、妊娠中に食べる場合は、妊娠高血圧症等のトラブルを予防するために食べ過ぎないように注意が必要です。追加する調味料を控えたり、コンビーフを加熱して余分な脂を落としたりすることで、塩分や飽和脂肪酸を少なくする工夫をするのもよいですね。
また、栄養バランスにも気を付けましょう。野菜、きのこ、いも類、海藻類、大豆製品などを組み合わせることで、不足する栄養素を補えます。食べ過ぎや栄養バランスに注意して、妊娠中にもコンビーフを楽しんでくださいね。