オートミールは低GI食品だからダイエットに良いけど粉砕したらGI値が上がるから効果がなくなるとか、粉砕したインスタントオーツは粉砕していないロールドオーツよりもGI値が上がるからダイエットに向かない、とかいう話を聞いたことはありませんか?
インターネットで調べてみても、オートミールを粉砕するとGI値が上がるという意見と粉砕しても変わらないという意見の両方があってよくわからない、と戸惑っている人も少なくないようです。
せっかく、ダイエットのためにオートミールを食べていても、粉砕してGI値が上がることでダイエット効果が薄れるのであれば意味がないですよね。
そこで、オートミールを粉砕するとGI値が上がるのか、また、ロールドオーツとインスタントオーツではダイエット効果に変化があるのかについて調べてみました。
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オートミールを粉砕するとGI値が上がるって本当なの?
粉砕してあるインスタントオーツは、粉砕していないロールドオーツよりもGI値が上がるかについてインターネットで調べてみたところ、ロールドオーツのGI値は55であるのに対し、インスタントオーツのGI値は76~83としてあるサイトが多いようです。
しかし、情報源が不明のものが多く、正しい情報なのかどうかよくわかりません。そこで、公開されている国際的なGIのデータを調べてみました。
国際的なデータベースのオートミールのGI値
公表されている国際的なGI値のデータには、オーストラリアのシドニー大学のデータベース(『Glycemic Index Research and GI News』)やアメリカで発表されたGI国際表(『International Tables of Glycemic Index and Glycemic Load Values: 2008』)があります。
これらに掲載されているオートミールのGI値を調べてみました。
データベース | オートミールの種類 | GI値 |
---|---|---|
シドニー大学 | Oats, rolled, uncooked オーツ麦、ロールド、未調理 | 59 |
One Minute Oats (Quaker Oats Co., Canada) クエーカー社 1ミニッツオーツ | 67 | |
Quick Oats (Quaker Oats Co., Canada) クエーカー社 クイックオーツ | 66 | |
GI国際表 | Traditional Rolled Oats (Woolworths Limited, Australia) ウールワース社 トラディショナルロールドオーツ | 57±5 |
シドニー大学のデータべースにある「クエーカー 1ミニッツオートミール」は、商品の写真を見る限りではクイックオーツだと思われます。
インスタントオーツ自体のGI値のデータは見つかりませんでしたが、クイックオーツのGI値がロールドオーツのGI値よりも高いことからも、粉砕されて細かくしたオートミールの方がGI値は上がる傾向があるようです。
オートミールで作ったお粥のGI値を比較すると?
シドニー大学のデータベースでもGI国際表でも、細かく粉砕したオートミールのGI値のデータは見つかりませんでしたが、インスタントオーツを使ったお粥(ポリッジ)のGI値のデータがありました。
データベース | お粥の種類 | GI値 |
---|---|---|
シドニー大学 | Instant oats, cooked in microwave for 2.5 min 電子レンジで調理したインスタントオーツ | 76 |
Instant oat porridge, prepared with water, cooked 水で作ったインスタントオート粥 | 78 | |
Instant oat porridge, cooked in microwave with water 電子レンジで水と調理したインスタントオーツ粥 | 82 | |
Instant oat porridge, prepared with water, cooked 水で調理したインスタントオーツ粥 | 87 | |
Porridge, made from rolled oats cooked for 20 min 20分間調理したロールドオーツのお粥 | 49 | |
Porridge, Traditional Rolled Oats お粥、トラディショナルロールドオーツ | 57 | |
GI国際表 | Porridge made from rolled oats Mean of 8 studies ロールドオーツの8件のお粥の平均 | 58±3 |
これを見ると、粉砕したインスタントオーツのお粥のGI値は粉砕していないロールドオーツのお粥よりも高いことがわかりますよね。
また、海外の論文(※)でも、インスタントオーツのお粥は大きい粒のオートミールのお粥よりもGI値が明らかに上がるということが示されています。
※The British journal of nutrition 114(8):1-7
Systematic review of the effect of processing of whole-grain oat cereals on glycaemic responseオートミールは粉砕するとGI値が上がることは確か
国際的なデータベースではインスタントオートミールそのもののGI値は示されていません。
しかし、クイックオーツの方がロールドオーツよりもGI値が上がるというデータや、インスタントオーツのお粥がロールドオーツのお粥よりもGI値が上がるというデータがあることから考えると、オートミールは形状によってGI値が変わり、粉砕して粒が細かくなればなるほどGI値が上がると考えて問題なさそうですね。
オートミールを粉砕するとGI値が上がるのはなぜ?
粉砕してオートミールを細かくすると表面積が大きくなりますよね。粉砕してGI値が上がる理由は、オートミールの表面積が増えることと関係しています。
オートミールを食べると唾液に含まれるアミラーゼという酵素が働いて、オートミールのでんぷんを分解する手助けをします。
オートミールを粉砕して表面積が大きくなると口の中でアミラーゼと接する部分が増えるために、アミラーゼの影響を受けやすくなって消化されやすくなるのです。
野菜を乱切りにして表面積を増やせば味が染み込みやすくなることと同じ理論ですね。でんぷんの消化が早くなると食後の血糖値が急上昇しやすくなるので、粉砕したオートミールは粉砕していないオートミールよりもGI値が上がるというわけです。
粉砕したオートミールはGI値が上がるから太りやすいって本当?
GI値が高い食品を食べると太りやすく、低い食品は太りにくいという話をよく聞きますよね。
粉砕して細かくしたインスタントオーツは粉砕していないロールドオーツよりもGI値が上がるということは、インスタントオーツはロールドオールよりも太りやすそうに思えますが、実はそうとも言い切れないのです。
それには、GI値の持つ弱点が関係しています。
そもそもGI値っていったい何?
日本ではGI値と呼ばれることが多いですが、正式にはGI(Glycemic Index=グリセミック・インデックス:血糖指数)といい、その食品を食べた後の血糖値が上がる度合いを示した数値です。
食品に含まれる糖質は、食べると体内で消化され、最終的にブドウ糖(グルコース)の形に分解されて血液中に入ります。この時の血液中のブドウ糖の量を示す数値が血糖値です。
GI値はブドウ糖をそのまま食べた後の血糖値の上がり方を100とした場合に、その食品を食べた後に血糖値がどこまで上がるのか、その割合を示した数値です。
つまり、ブドウ糖のGI値は100で、その他の食品のGI値は100に近いほど、食後の血糖値が急激に上がる傾向がある、つまり血液中にブドウ糖が一気に増える可能性が高いことになります。
血糖値が上がる度合いと太りやすさの関係とは?
血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)は常に一定の範囲になるように調整されています。調整する役割をするホルモンが「インスリン」です。
食後に血糖値が急激に上がると、すい臓からインスリンが分泌されます。そして、体の各組織の細胞にエネルギー源となるブドウ糖を引き渡しすことで血液中のブドウ糖の量を減らします。
同時に、インスリンは余分なブドウ糖を中性脂肪に変えて脂肪細胞に蓄えます。食後に血糖値が急激に上がるとインスリンが大量に分泌され、血液中に過剰に増えたブドウ糖をどんどん脂肪に変えていきます。
そのため、食後に血糖値が急激に上がれば上がるほど脂肪が蓄積しやすくなるのです。
粉砕したオートミールは太りやすい?
食品のGI値は食後の血糖値の上昇度合いを示した数値です。つまり、GI値が高ければ高いほど血糖値が急激に上がるので、脂肪も蓄積しやいということになりますよね。
粉砕してあるインスタントオーツは、粉砕していないロールドオーツよりもGI値が上がるということは、理論上はロールドオーツよりも脂肪が蓄積しやすいということになります。
ただし、必ずしも「GI値が高い食品=太る」という構図が当てはまるわけではありません。その理由は、GI値は絶対ではなく、さまざまな要因で変動しやすい数値だからです。
GI値と栄養成分値の測定方法の違い
食品のGI値も栄養成分の数値も人の健康に影響を与える要素ですよね。どちらも公的なマニュアルに従って測定されたものですが、両者の決定的な違いは栄養成分値が器械で測定した値であるのに対し、GI値は人が実際に食べてから血糖値を測定している点です。
具体的には、10人の健康な被験者に標準食(ブドウ糖、白パン、米飯)と測定する食品の両方を食べてもらい、2時間後までの血糖値をグラフ化してその面積の比率からGI値を計算します。そして、最終的には10人分の平均値を正式なGIとしています。
GI値が要因によって変動しやすい理由はこの測定方法にあり、専門家の間ではいくつかの問題点も指摘されています。GI値の4つの弱点をご紹介します。
1.被験者によってバラつきが大きい
被験者は毎回同じ人ではなく、その時々に違う10名が集められます。同じ食品でも人によって血糖値が同じようなパターンで上がるとは限らないため、どうしても人によるバラつきが大きくなります。
GI値は10名の平均値が採用されますが、例えばAグループの10人とBグループの10人ではGIの平均値が変わってくる可能性があります。
また、同じ個人でも状況によって血糖値の上がり方は変わります。同じ人でも今日測定したGI値と1週間後に測定したGI値が同じとは限らないのです。
2.測定時と同じような状況で食事をすることがない
GI値の測定は、一定時間食事を摂らずに空腹の状態で、該当食品だけを食べて測定します。しかし、実際の食事では何かを単品で食べることは少なく、十数種類の食材をいっしょに食べることがほとんどです。
血糖値は食べる食品の組み合わせによっても上がり方が変わります。例えば、食物繊維やたんぱく質や脂質は血糖値の上昇を穏やかにする作用があるので、糖質といっしょに食べると血糖値の上がる度合いが緩やかになることがわかっています。
GI値は空腹状態で他の食品いっしょに食べずにその食品だけを食べて血糖値を測定しています。そのため、さまざまな食材をいっしょに食べる実際の食事では当てはまらないケースの方が多くなります。
3.欧米基準で日本人に当てはまらない可能性も
シドニー大学のGIデータベースやGI国際表で示されているGI値を測定する際の被験者は欧米人です。
一般的に、日本人は欧米人よりもインスリンを分泌する力が弱いため、同じものを食べても日本人の方が血糖値が大きく上がる可能性があります。
また、GI値を測定する食材も欧米のものがほとんどで、日本の米や麺類などのデータは多くありません。
これらの理由から厚生労働省も、”数値を算定できるほど十分な科学的根拠は得られていない”として、現時点で「日本人の食事摂取基準」にGI値を採用していません。
食べる量によっても血糖値の上がり方が変わる
GI値を測定する場合、含まれる糖質の量が50gになるように食べる量を固定して行います。しかし、血糖値は食品の種類だけでなく食べる量によっても含まれる糖質の量が変わってくるので、当然血糖値が上がる度合いも変わってきます。
GI値は食べる量(含まれる糖質量)を考慮していないので、実際の食事においてはGI値が変わる可能性が高くなります。
この問題点を補うために生み出された考え方がGL(Glycemic Load=グリセミックロード:血糖負荷)です。GLはGI値に糖質の量をかけて100で割った値で、実際に食べた糖質の量が反映されています。
試しに、オートミールの1食分を40gとして、茶碗1杯分の白米(約65g)のGLと比較してみましょう。
GI | GL | |
---|---|---|
ロールドオーツ(40g) | 59 | 14.1 |
クイックオーツ(40g) | 66 | 15.8 |
インスタントオーツ(40g) | 78 | 18.6 |
白米(65g) | 80 | 40.1 |
※GI値は、ロールドオーツ:59、クイックオーツ:66、インスタントオーツ:78、白米:80として計算
オートミールのGLは、粉砕すると多少は上がるものの全体的に低めであることがわかります。白米とインスタントオーツのGI値はほぼ同じですが、GLは2倍以上の差がありますよね。
GLは10以下が「低GL食品」、11~19が「中GL食品」、20以上が「高GL食品」と定義されています。
オートミールは粉砕の有無にかかわらず中GL食品に、白米は高GL食品となり、GLで見るとオートミールを粉砕しても白米よりも血糖値の上がる度合いが小さい食品ということになりますよね。
GI値は参考にする程度がちょうどよい
一般的に、高GI食品は食後血糖値が急上昇しやすいために脂肪が蓄積しやすく、逆に低GI食品は血糖値が緩やかに上がるので脂肪が蓄積しにくいとされています。
この理屈からすると、粉砕してあるインスタントオーツは粉砕していないロールドオーツよりGI値が上がるため、インスタントオーツの方が太りやすい食品ということになります。
しかし、GI値は実際の食生活に当てはまりにくい状況で測定しているため再現性が低く、測定時のバラつきも大きいことから、絶対的な数値というわけではありません。
実際には、いっしょに食べる食品によっても血糖値の上昇の仕方は変わってきます。ダイエットにはGI値よりも栄養バランスを重視する方が大切なので、GI値は参考程度に捉えておくくらいでちょうどよいと言えるでしょう。
オートミールを粉砕してGI値が上がるとダイエット効果は低くなるの?
インスタントオーツや粉砕したオートミールは、粉砕なしのロールドオーツよりもGI値が上がるからダイエットには向かないと考える人も多いようですが、これは本当なのでしょうか。
結論から言うと、粉砕したオートミールはGI値が高めなので、ロールドオーツよりも血糖値が急上昇しやすいことは確かですが、決してダイエットに向かない食品というわけではありません。その理由を解説します。
オートミールの食物繊維がダイエットに効果的
オートミールは白米や小麦粉とは異なり、外皮や胚芽が付いたまま加工される全粒穀物なので、食物繊維やミネラルが豊富に含まれています。
なかでも、「β-グルカン」という水溶性食物繊維が多く、ダイエットに良い効果をもたらすことがわかっています。
オートミールを粉砕しても食物繊維の効果が低くなることはありません。ですから、インスタントオーツや粉砕したオートミールはロールドオーツよりGI値は上がることはあっても食物繊維の効果が下がることはないので、ダイエット効果がなくなるわけではありません。
粉砕してGI値が上がるとしてもダイエットにおすすめの理由5つ
一般的には、オートミールは食後の血糖値が緩やかに上がることで脂肪が蓄積しにくいため、ダイエットに効果的な食品として知られています。
オートミールを粉砕してGI値が上がると粉砕しない場合と比べると脂肪が蓄積しやすくなることは確かです。
しかし、オートミールにはそれ以外にもダイエットに向いている要素がたくさんあるので、ダイエットに効果的であることに代わりはありません。
少量でも満腹感が得られやすい
オートミールは白米や小麦粉に比べると食物繊維が豊富に含まれています。食物繊維は水を吸うと膨らむため、少量でも満腹感を得られやすいという特徴があります。
白米や小麦粉よりも少量で満足感が得られる分、摂取カロリーを抑えられるというわけですね。
満腹感が持続しやすい
水溶性食物繊維は体内で水を吸収して粘度が上がり、胃腸をゆっくりと進むために白米や小麦粉よりも満腹感が持続しやすいというメリットがあります。
満腹感が持続すると余計な間食を抑えられるので、ダイエットの大きな味方になりますよね。
余分な糖を吸着して体外に排出する
食物繊維は腸内を移動する際に余分な糖分を吸着して便といっしょに体外に排出します。食物繊維が余分な糖を吸着してくれると血中に入るブドウ糖も少なくなるため、血糖値が上がる度合いも緩やかになります。
腸内環境を整えて便秘を解消する
オートミールには水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がバランスよく含まれているため、便秘を解消する効果や腸内の善玉菌を増やして腸内環境を良くする効果が期待できます。
腸内環境が良くなって便秘が解消されると代謝が上がるために、太りにくく痩せやすくなります。
セカンドミール効果で次の食後の血糖値上昇も穏やかに
オートミールに豊富に含まれるβ-グルカンにはオートミールを食べた時だけではなく、その次の食事の後も血糖値を上げる度合いを緩やかする「セカンドミール効果」があることがわかっています。
これは、β-グルカンが大腸で発酵されてできる短鎖脂肪酸という成分が「GLP-1」というホルモンの分泌を促すことで起こる効果ですが、このGLP-1というホルモンにはセカンドミール効果以外にも、満腹中枢を刺激して食べ過ぎを防ぐ効果や、胃の中に食べ物を長く留まらせて満腹感を持続する効果も期待できることもわかっています。
食べ方を工夫することで低GI化も可能に!
食物繊維やたんぱく質や脂質を糖質といっしょに食べると、糖質を単体で食べるよりも血糖値が緩やかに上がることがわかっています。
ですから、インスタントオーツや粉砕したオートミールも食物繊維やたんぱく質をいっしょに食べることで血糖値の上昇が穏やかになる効果が期待できます。特に、
特に朝食で食物繊維をしっかりと摂ると、1日を通して血糖値コントロールしやすくなるのでおすすめです。
さらに、食物繊維→たんぱく質→糖質の順で食べることやしっかりと噛んで食べることも食後の血糖値の急上昇を抑えるために有効です。しっかりと噛むと満腹中枢が刺激されて食べ過ぎも防げるので、ダイエットには一石二鳥ですね。
まとめ:オートミールは粉砕するとGI値は上がるがダイエット効果はなくならない
国際的な公式データではインスタントオーツのGI値を見つけられませんでしたが、オートミールは粉砕するとGI値が上がることは事実のようです。
しかし、GI値は不安定な要素も多くさまざまな要因によって変動しやすいため、「オートミールは粉砕するとGI値が上がるからダイエットには不向き」とは限りません。
粉砕するとGI値が上がることから考えるとインスタントオーツよりもロールドオーツの方が高いダイエット効果が見込めることは確かですが、粉砕したからといってオートミールのダイエット効果自体がなくなるわけではないので、安心して使ってくださいね。