近年、健康的な食品として話題になっているオートミール。ダイエットや健康のために食事に取り入れている人も多いのではないでしょうか。
一方、健康診断で尿酸値が高めと指摘された人にとって、気になるのがプリン体ですよね。プリン体の過剰摂取は尿酸値を上げる原因になると言われていますが、はたしてオートミールにはプリン体がどの程度含まれているのでしょうか。
健康のためにオートミールを食事に取り入れたいけどプリン体が気になるし、尿酸値が高めの人がオートミールを食べても問題ないのかについて知りたい人も多いのではないでしょうか。
そこで、オートミールにはどの程度のプリン体が含まれるのか、尿酸値の高めの人がオートミールを食事に取り入れても問題ないのかどうかについて調べてみました。
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オートミールのプリン体の含有量は?海外のデータを調べてみた!
オートミールは欧米では古くから主食として食べられていました。しかし、日本では、オートミールが身近な食材として知られるようになったのはここ数年のこと。そのためか、インターネットで検索してもオートミールにどれくらいのプリン体が含まれているのかに関する文献を見つけることはできませんでした。
そこで、海外のサイトでオートミールにはどれくらいのプリン体が含まれているのかを調べてみました。
欧米ではオートミールのプリン体は”中程度”という認識が一般的
アメリカを中心とした海外のサイトを調べてみたところ、健康系サイトや病院のHPなどの多くのサイトで、オートミールに含まれるプリン体の量は100gあたりで50~150mgと記述されていました。
プリン体の含有量によって、食品100gあたりのプリン体の含有量が100mg未満の食品は「低い」、100mg以上200mg未満の食品は「中程度」、200mg以上の食品は「高い」と分類されています。つまり、欧米ではオートミールのプリン体の含有量は中程度という考えが一般的のようです。
オートミールはプリン体が「低い」と分類されている説もあり!
一方で、イギリスの『Medical News Today』というサイトでは、アメリカの医学博士Adam Bernstein氏の医学的レビューとして、以下のような内容の記事を紹介しています。
・2019年の調査では、オートミール100gあたりのプリン体の含有量は50~100mgでプリン含有量が低いと分類されているため、痛風の人の朝食に適している可能性がある。
・ただし、情報源によっては多少の矛盾があり、オートミールはプリン含有量が中程度の食品で、たまに食べることに適しているという専門家もいる。
また、2017年に発表された論文(※出典1)でも、オートミールの原料であるオーツ麦に含まれるプリン体の平均値は94mgと紹介されていて、プリン体の低い食品に分類されています。
※出典1:Rehab M. Hafez, Tahany M. Abdel-Rahman, Rasha M. Naguib(2017).Uric acid in plants and microorganisms: Biological applications and genetics.Journal of Advanced Research,8(5),p475-486
オートミールのプリン体は多い?それとも少ない?
海外では、オートミールに含まれるプリン体は100gあたりで50~100mgもしくは50~150mgとされていますが、このプリン体の量は多い方なのでしょうか?それとも少ない方なのでしょうか。
穀物の100gあたりのプリン体の量を比べてみると?
最初に、他の穀類との100gあたりのプリン体の含有量を比較してみましょう。下の表は主な穀類の100gあたりに含まれるプリン体の量を示したものです。
食品名 | プリン体含有量 (mg/100g) |
---|---|
白米 | 25.9 |
玄米 | 37.4 |
胚芽米 | 34.5 |
大麦 | 44.3 |
そば粉 | 75.9 |
薄力粉 | 15.7 |
中力粉・強力粉 | 25.8 |
(※出典2)
100gあたりのオートミールのプリン体の量が50~150mgとすると、他の穀類よりも多めであることがわかりますね。欧米では、オートミールのプリン体の含有量は「少ない」から「中程度」ですが、他のほとんどの穀類はプリン体の量が「極めて少ない(50mg未満)」に分類されています。
1食分のオートミールのプリン体も他のごはん類より多め!
では、次にオートミール1食分のプリン体の量と、茶碗1杯分の白ごはんや玄米ごはんなどに含まれるプリン体の量を比較してみましょう。
食品名 | 1食分 | プリン体含有量 (mg) |
---|---|---|
オートミール | 30g | 28.2 |
40g | 37.6 | |
50g | 47.0 | |
白米ごはん | 65g | 16.8 |
玄米ごはん | 65g | 24.3 |
胚芽米ごはん | 65g | 22.4 |
麦ごはん(大麦3割) | 白米25g+大麦16g | 13.6 |
※オートミールのプリン体は94mg/100gとして計算
1食分に含まれるプリン体の量を見ても、オートミールは他のごはん類よりもやや多めであることがわかります。1食でオートミール40gを食べた場合、白米ごはん茶碗1杯分の約2.2倍のプリン体を摂取することになりますね。
他の食品に含まれるプリン体の量と比較してみると?
オートミールに含まれるプリン体の量は、白米や玄米に比べるとやや多めであることがわかりましたが、穀類以外の食品と比較するとプリン体の量は多い方なのでしょうか。それとも少ない方なのでしょうか。
オートミールに含まれるプリン体の量を、肉、魚、野菜などの他の食品のプリン体の量と比較してみましょう。
プリン体 含有量の分類 | 食品名 | 1食分 | プリン体含有量 (mg) |
---|---|---|---|
中程度 | 牛もも肉 | 80g | 108 |
鶏もも肉 | 80g | 98 | |
ブリ(切り身) | 80g | 97 | |
さんま(1尾) | 120g | 186 | |
シバエビ | 50g | 72 | |
明太子 | 20g | 32 | |
納豆 | 50g | 67 | |
ツナ缶 | 40g | 58 | |
少ない~中程度 | オートミール | 30~50g | 30~50前後 |
少ない | 豚ロース肉 | 80g | 73 |
なす | 100g | 50 | |
ほうれん草 | 60g | 31 | |
かぼちゃ | 120g | 68 | |
ブロッコリー | 70g | 49 | |
カップラーメン(しょうゆ) | 85g | 60 | |
極めて少ない | もやし | 100g | 35 |
木綿豆腐 | 80g | 25 | |
豆乳 | 200g | 44 | |
ヨーグルト | 100g | 5 | |
バナナ | 100g | 3 | |
キャベツ | 100g | 3 | |
大根 | 100g | 1.7 |
(※出典2)
オートミール1食分中のプリン体の量はだいたい30~50mg前後なので、プリン体の量が中程度の肉や魚だけでなく、野菜や豆類などの食品と比較しても決して多い方ではないということがわかります。
むしろ、プリン体の含有量の分類が「少ない」~「中程度」に分類される他の食品のなかでは少なめの部類に入ると言ってもよいくらいですよね。
※出典2:金子 希代子, 福内 友子他:食品中プリン体含量および塩基別含有率の比較.痛風と核酸代謝39(1) p7-21,2015
尿酸値が高めの人はプリン体制限のためにオートミールを避けるべき?
オートミールのプリン体含有量は一般に「少ない」~「中程度」に分類されます。他の食品と比較すると決して多い方ではありませんが、米や小麦など主食になる他の穀類よりはプリン体が多い部類に入ります。
では、尿酸値が高めの人はオートミールをあまり食べない方がよいのでしょうか?
海外ではオートミールを制限する方がよいという考えが一般的
ピッツバーグ大学医療センターではオートミールのプリン体は「中程度」とみなし、痛風患者はオートミールを食べる頻度を週2 回に制限することを推奨しています。
オートミールのプリン体含有量は少ないという見解を示している Adam Bernstein医学博士も、痛風患者のオートミール摂取については”食べる量やいっしょに食べる食事の内容によって変わる”としています。
また、痛風患者が1日に食べる量については、1/2カップ(約40g)や2/3カップ(約53g)までとしている専門家が多く見られました。
オートミールは他の健康効果が高いため完全に排除することは推奨しないもののプリン体の影響を考えると、痛風患者はオートミールの量や食べる頻度に注意が必要という考えが一般的のようです。
尿酸値が高い人のプリン体の過剰摂取は禁物!
日本では、血液検査での尿酸値が7.0mg/dLまでが基準値内で、この数値を超えると異常となり「高尿酸血症」と呼ばれるようになります。高尿酸血症が長く続くと関節内で尿酸が結晶化して激痛を伴うようになります。これが「痛風」です。
尿酸のもととなるプリン体の約8割は体内で合成され、食事から摂取されるプリン体は約2割ほどです。そのため、極端なプリン体制限をする必要はありませんがプリン体の過剰摂取は尿酸を増やす一因になるため、尿酸値が高めの人はプリン体を摂りすぎないことも大切です。
日本痛風・尿酸核酸学会による『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』では、高尿酸血症や痛風の人の1日のプリン体の摂取量は400mgを目安にすることを推奨しています。
オートミールは尿酸値改善に良いのか悪いのかどっち?
これまでの研究で、植物性食品のプリン体は動物由来のプリン体よりも尿酸値を上げにくいという結果が報告されています。
また、野菜・果物・ナッツ、全粒穀物、豆類、乳製品を毎日摂り、肉類や甘味・菓子類の摂取量が少ないDASH食や地中海食と呼ばれる食事をしている人たちの尿酸値が低めというデータや、食物繊維の摂取量が多い人ほど高尿酸血症の発症率が低いというデータもあります。
オートミールは全粒穀物で食物繊維も豊富ですが、オートミールが尿酸値を上げる要素があるのかそれとも下げる要素があるのかについてはまだ明らかにされていません。特に日本ではオートミールが広く食べられるようになってからまだ日が浅いため、オートミールについては『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』にも記載されていないのが現状です。
プリン体を摂りすぎなければオートミールを毎日食べてもよい?
プリン体は含まれている食品によって量だけでなく、その質も異なります。そのため、同じくらいの量のプリン体であっても含まれる食品によっては、体内で合成される尿酸の量も変わることがわかっています。
オートミール1食分に含まれるプリン体の量は30~50mg程度で、他の食品と比較しても決して高い方ではありません。しかし、海外の専門家の間でも、尿酸値が高い人でもプリン体を摂りすぎなければ毎日食べても問題ないという考えと、週2~3日の摂取に制限すべきだという考えとに分かれるようです。
まだまだ明らかになっていない部分も多いため、尿酸値が高めの人は自己判断でオートミールを食べることは避け、どのくらいの量をどのくらいの頻度でなら食べても大丈夫かについて必ず医師に相談するようにしてください。
尿酸値の高めな人がオートミールを食べる場合は食べ方にも工夫を!
尿酸値の高めな人がオートミールを食事に取り入れる場合は、食べる量や頻度だけでなくオートミールといっしょに食べる食材を工夫をすることも大切なポイントになります。
肉や魚を減らし野菜類・海藻・大豆製品などを増やす
尿酸は酸に溶けにくくアルカリに溶けやすい性質があります。そのため、体内の尿酸を多く排泄するためには尿をアルカリに傾けて尿酸をたくさん溶かすことが大切です。
基本的に、肉類や魚介類は尿を酸性に傾けやすく、野菜・きのこ・海藻・大豆製品・ナッツなどは尿をアルカリに傾けやすい食材です。オートミールを食べる場合も肉類や魚介類を減らし、野菜・きのこ・海藻・大豆製品などを増やすようにしましょう。
肉類や魚介類はプリン体も多めで、野菜・きのこ・海藻・大豆製品・ナッツなどはプリン体も少なめなので、プリン体の摂取量を減らす意味でも一石二鳥ですね。
プリン体の多い食品は茹でてから茹で汁を捨てる
プリン体は水に溶けやすい性質があります。ですから、プリン体が比較的多い食品でも、下茹でをするとプリン体が水に溶け出すため、食品中のプリン体の量を減らせます。
ただし、プリン体の多い食品を茹でた茹で汁にはプリン体がたっぷりと溶け出しています。スープや煮物などを作る際は茹で汁をそのまま料理に使わずに、茹で汁を捨ててから新たに水を入れて料理を作るようにしましょう。
尿酸値を下げやすい食品をいっしょに食べる
『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』では、高尿酸血症や痛風のリスクを減らす食品や栄養素として、コーヒー、チェリー、ビタミンC、乳製品(特に低脂肪乳製品)、食物繊維が紹介されています。逆に、尿酸値を上げやすい食品として果糖やキシリトールをあげています。
尿酸値が高めな人がオートミールを食事に取り入れる場合はコーヒー、チェリー、乳製品や、ビタミンCや食物繊維を多く含む食品をいっしょに食べるようにするとよいでしょう。
ビタミンC:イチゴ、キウイ、アセロラ、柑橘類、カラーピーマン、ブロッコリーなど
食物繊維:海藻類、野菜(特に根菜類)、きのこ類、豆類、いも類、穀類(特に全粒穀類)など
ただし、甘い果物には尿酸値を上げやすい果糖が多く含まれています。果物の食べ過ぎには注意しましょう。
まとめ:オートミールのプリン体は「少ない」から「中程度」!食べる際は医師に相談を
オートミールが、日本で一般に広く食べられるようになったのはここ数年、コロナ禍で需要が一気に高まってからです。そのため、オートミールにプリン体がどのくらい含まれているのかについての国内の研究データはほとんど見つかりません。
古くからオートミールを食べる習慣のある欧米でも、尿酸値が高い人はオートミールを制限した方がよいのかに関しては専門家の間でも意見が分かれているようです。
オートミールのプリン体や尿酸値との関係性についてはまだまだわからない部分がたくさんあるため、尿酸値が高めの人がオートミールを食事に取り入れたい場合は、自己判断で食べたりせずに必ず医師に相談してからにしましょう。