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ここ数年で日本でも一気に人気が高まったきたオートミール。ヘルシーでダイエットに良いと評判ですが、糖尿病の予防や改善にも良いという話を聞いたことはありませんか?果たしてこれは本当なのでしょうか。
この記事では、オートミールが糖尿病の予防や改善に良いのかどうか、また、もし効果があるとすればどのような食べ方をするとオートミールが糖尿病の予防や改善に役立つのかについて解説します。
Contents
オートミールが良いのかを知るために糖尿病について理解しよう

オートミールが糖尿病の予防や改善に良いのか良くないのか、それを知るには糖尿病や血糖値の仕組みを理解することが近道になります。最初に、糖尿病の基本について簡単に解説します。
糖尿病とは?生活習慣が影響するのは2型糖尿病
糖尿病とは、簡単に言うと血糖(血液中のブドウ糖)の濃度が常に高い状態にあることを言います。
糖尿病自体はすぐに命に関わる病気ではありませんが、血糖の高い状態が続くと血管が傷付き、網膜症、腎臓病、神経障害といった合併症だけでなく、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こして生命が危険になることもあります。
糖尿病はかなり進行するまで自覚症状がないため気付きにくい病気ですが、日本人の6人に1人は糖尿病もしくは予備軍(境界型:糖尿病の一歩手前)と言われています。定期的に健康診断を受けて糖尿病を早期発見し、早期に治療を開始することが大切です。
糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があり、日本では糖尿病を発症している人の95%以上は2型糖尿病です。
1型糖尿病:すい臓に障害が起こり、血糖をコントロールするインスリンというホルモンが出なくなる、もしくはほとんど出なくなる
2型糖尿病:遺伝的な要素や、肥満、食生活、運動不足、ストレスなどの生活習慣的な要素によって、インスリンが出にくくなったりインスリンの機能が低下したりする
1型糖尿病は生きていくために注射でインスリンを投与する必要がありますが、2型糖尿病は食生活などの生活習慣を見直すことで予防や改善が可能です。
血糖値っていったい何?
糖尿病は健康診断などで血糖値が高くなることで発覚しますが、そもそも血糖値とは何でしょうか。
血糖値とは血液中のブドウ糖の濃度を示す数値のことで、私たちが食べる炭水化物(糖質)と深い関係があります。
糖質には主に、穀類やいも類などに含まれているでんぷんと、糖類(砂糖や果物などに含まれる果糖など)がありますが、これらはすべてブドウ糖(グルコース)がたくさん集まってできています。
ごはんや砂糖などの糖質を食べると、体の中でブドウ糖の形に分解されて血液中に入ります。この血液中のブドウ糖の量を示す値が血糖値です。血液に入ったブドウ糖は全身に運ばれ、体の各組織の細胞に取り込まれてエネルギー源として利用されます。
正常な血糖値コントロールの仕組み
健康な人では、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が一定の範囲内になるようにコントロールされています。
血糖値をコントロールする役割をしているのが「インスリン」というホルモンです。
食事をすると血液中にブドウ糖がたくさん入ってくるので血糖値は上昇します。すると、直ちにすい臓からインスリンが分泌されます。
体の各組織の細胞は膜に覆われているためブドウ糖を直接取り込めません。すい臓から分泌されたたくさんのインスリンが細胞の表面にくっつくことで、ブドウ糖を取り込めるようになるのです。
つまり、インスリンは血液中のブドウ糖を細胞に送り込む役割を担っているということになります。

インスリンが血液中のブドウ糖を細胞に送り込むと、当然血液中のブドウ糖は減りますよね。すると血糖値は下がってまた、一定の範囲内に戻るという仕組みです。
糖尿病の人の血糖値とインスリン分泌の関係性
健康な人の場合、食事をするとインスリンが分泌されて、食後に一時的に上昇した血糖値も2時間ほどで元の一定範囲の値に戻ります。
しかし、2型糖尿病の人の場合、インスリンが十分に分泌されなかったり(インスリン分泌低下)、分泌されてもインスリンが効きづらかったり(インスリン抵抗性)して、血液中のブドウ糖を細胞にうまく送り込めなくなるために、血糖値の高い状態が続きます。
インスリン分泌低下やインスリン抵抗性は遺伝的要素もありますが、過食、高脂肪食、運動不足、肥満、ストレスなど生活習慣の影響を大きく受けます。
特に、食事は血糖値のコントロールに直接関わってくるため、糖尿病の予防や改善に最も重要な要素です。
食後の血糖値急上昇を抑えることが大切
糖尿病の人はインスリンの働きが弱いので、食後に血糖値が急上昇しやすくなります。また、加齢や生活習慣からインスリンの働きが弱って、普段の血糖値は正常でも、食後だけ高血糖になる人もいます。

食後に急激に血糖値が上がりその後急激に血糖値が下がる状態を「血糖スパイク(食後高血糖)」といい、血糖スパイクのある人は糖尿病予備軍です。食後高血糖は健康診断では見逃されやすいので注意が必要です。
食後に血糖値が急上昇すると血管にダメージを与えるだけでなく、インスリンを多量に分泌するためにすい臓に負担がかいあるのですい臓は疲弊し、インスリンを分泌する力が弱まってしまいます。
そのため、糖尿病の予防や改善には、食後の血糖値を急上昇させないようにすることが大切です。
オートミールは有効?糖尿病の予防や改善に役立つ食事の基本

糖尿病の予防や改善には、食後の血糖値を急上昇させない食事が大切ですが、具体的にはどうすればよいのでしょうか。オートミールは役に立つのでしょうか。
糖尿病の予防や改善にカロリー制限や糖質制限は必要?
糖尿病は糖質やカロリーを制限する必要があるというイメージがある人も多いのではないでしょうか。実際のところはどうなのでしょうか。
糖尿病にはカロリー制限は必要?
糖尿病や糖尿病予備軍の大きな原因のひとつに肥満があります。肥満を防ぎ標準体重に近付けるためには過剰なカロリー摂取を避ける必要があります。
日本糖尿病学会が発行する『糖尿病診療ガイドライン2019』では、1日の総エネルギー摂取量の目安が示されています。
◆総エネルギー摂取量=目標体重(kg)×エネルギー係数(kcal/kg)◆
◆目標体重◆
65歳未満:(身長×身長)×22
65-74歳:(身長×身長)×22~25
75歳以上:(身長×身長)×22~25
◆身体活動レベルと病態によるエネルギー係数(kcal/kg)◆
1.軽い労作(大部分が座位の静的活動):25~30
2.普通の労作(座位中心だが通勤・家事、軽い運動を含む):30~35
3.重い労作(力仕事、活発な運動習慣がある):35~
例えば、身長が170cmの50歳のビジネスマンの男性で糖尿病を持っている場合、目標体重は次のようになります。
(1.7×1.7)×22=63.58kg
そして、普通の労作のエネルギー係数は30~35なので、計算すると次のようになりますよね。
63.58×30~35=1907.4kcal~2400.3kcal
ちなみに、厚生労働省の『日本人の食事摂取基準(2020年版)』に基づいて、健康な50歳の男性で同じ活動レベルの場合の1日の総エネルギー量の目安を計算すると2600kcalとなります。
ですから、糖尿病の人は健康な人に比べて8~9割程度のカロリーに抑える必要があることがわかりますよね。
糖尿病の食事に糖質制限は必要?
『糖尿病診療ガイドライン』でも2016年版までは、炭水化物の比率目標値は総エネルギーの50~60%としていました。
しかし、2019年版では、「これを設定する明確なエビデンス(科学的根拠)はない」として、糖質摂取量の目標値の明記がなくなり、「個人の状況によって柔軟に対応する」という記載に留まっています。
このことからもわかるように、これまでは糖尿病の糖質制限食は一切認められていませんでしたが、最近では糖質制限が有効かどうかの検討を前向きに行う動きが出てきているようです。
とはいえ、どの程度の糖質制限なら問題ないかについては今のところわかってはおらず、極端な糖質制限はしないという方針が一般的のようです。
ですから、自己判断で糖質制限はせずに、必ず主治医や管理栄養士の指示に従うようにしましょう。
オートミールはカロリー制限の役に立つの?
オートミールはダイエットに良いという話をよく聞きますよね。オートミールがダイエットに良いということは、糖尿病の予防や改善のためのカロリー制限の助けになるのでしょうか。
オートミールと白米および玄米の三大栄養素(体のエネルギーとなる栄養素)を比べてみましょう。
100gあたりの三大栄養素
オートミール | 精白米 (うるち米) | 玄米 | |
---|---|---|---|
エネルギー(kcal) | 350 | 342 | 346 |
たんぱく質(g) | 13.7 | 6.1 | 6.8 |
脂質(g) | 5.7 | 0.9 | 2.7 |
炭水化物(g) | 69.1 | 77.6 | 74.3 |
糖質(g) | 59.7 | 77.1 | 71.3 |
食物繊維(g) | 9.4 | 0.5 | 3.0 |
1食分の三大栄養素
オートミール 少なめ1食分(30g) | オートミール 1食分(40g) | オートミール やや多め1食分(50g) | 精白米 茶碗1杯分(65g) | 玄米 茶碗1杯分 (65g) | 食パン 6枚切1枚 (62g) |
|
---|---|---|---|---|---|---|
エネルギー(kcal) | 105 | 140 | 175 | 222 | 225 | 154 |
たんぱく質(g) | 4.1 | 5.48 | 6.85 | 4.0 | 4.4 | 5.5 |
脂質(g) | 1.7 | 2.28 | 2.85 | 0.6 | 1.8 | 2.5 |
炭水化物(g) | 20.7 | 27.6 | 34.6 | 50.4 | 48.3 | 28.8 |
糖質総量(g) | 17.9 | 23.9 | 29.9 | 50.1 | 46.3 | 26.2 |
食物繊維総量(g) | 2.8 | 3.8 | 4.7 | 0.3 | 2.0 | 2.6 |
100gあたりではオートミールと米のカロリーはほとんど変わりませんが、1食分ではオートミールのカロリーは米よりもかなり抑えられることがわかります。これは、1食分の量に関係しています。
後ほど詳しく触れますが、オートミールは米よりも食べ応えがあるため米より少量でも満腹感を得やすい穀物です。そのため、各メーカーでは1食分のオートミールは30~40gを推奨しています。
1食に食べる量が少なくてすむ分、カロリーも抑えられるというわけですね。
ちなみに、玄米も白米に比べると食べ応えがあり白米よりも満腹感を得やすい特徴があります。茶碗1杯分の量は白米と同じでも、オートミールと同様に食べる量を減らしやすいというメリットがあるので、覚えておくとよいでしょう。
オートミール30gで足りない場合はどこまで量を増やせる?
オートミールの1食分を30gと設定しているメーカーが多いですが、オートミールを米化(※)して食べた人はわかるように30gだとかなり少なめです。
女性でも少なめと感じるのに、男性だとなおさら満腹感を得にくいような気がしますよね。
これには水分量が関係しています。オートミールは水分を吸ってかなり膨らむので、お粥のように水分量が多いとかさ増しされやすいのですが、米化すると水分が少なめなのでお粥にするほどかさ増しされないことが原因です。
30gで足りないようであれば1食分のオートミールの量を増やしてみるとよいでしょう。カロリー面だけ見ると、単純計算でオートミール約60gで茶碗1杯分の白米と同程度のカロリーになるので、これを踏まえて食べる量を決めるとよいですね。
※米化:オートミールを水分とともに加熱してごはんのような状態にする調理法。ごはん化
オートミールはカロリー以外にも糖尿病の予防・改善にメリットあり!

オートミールは白米よりも1食分のカロリーが抑えられるという面で糖尿病の予防や改善に有効だということがわかったかと思いますが、実はオートミールにはそれ以外にも糖尿病の予防や改善に有効なメリットがたくさんあるのです。
糖尿病の予防や改善に役立つことが期待できるオートミールの効果について解説します。
オートミールは食物繊維が豊富!
白米が外皮や胚芽を取り除いて精白しているのに対し、オートミールは脱穀したオーツ麦の外皮や胚芽が付いたまま丸ごと加工している全粒穀物です。
そのため、白米よりも食物繊維が豊富に含まれています。どのくらい多いのかを比較してみましょう。
オートミール (30g) | オートミール (40g) | オートミール (50g) | 白米 茶碗1杯分(65g) | 玄米 茶碗1杯分(65g) |
|
---|---|---|---|---|---|
食物繊維総量(g) | 2.9 | 3.8 | 4.7 | 0.3 | 2.0 |
不溶性食物繊維(g) | 1.9 | 2.5 | 3.1 | 0.3 | 1.5 |
水溶性食物繊維(g) | 1.0 | 1.3 | 1.6 | 微量 | 0.5 |
1食分のオートミールには食物繊維が白米の10倍以上含まれていることがわかりますよね。玄米もオートミールと同じ全粒穀物なので食物繊維は多めですが、オートミールはさらに多くの食物繊維を含んでいます。
オートミールに水を加えるとかさ増しされて食べ応えがあるのも、食物繊維が水を吸って大きく膨らむためです。
オートミールは食物繊維のバランスが理想的
食物繊維にはいろいろな種類がありますが、大別すると水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維に分けられます。
それぞれ、違った働きをするので、健康のためにはどちらかに偏らずにバランスよく食べる必要があります。
オートミールの食物繊維は、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維が2:1の割合で含まれてまさに理想的なバランスです。
水溶性食物繊維は野菜などから比較的摂りにくい栄養素なので、オートミールは水溶性食物繊維の貴重な供給源になりますね。
オートミールの食物繊維が糖尿病の予防や改善に効果的な理由

では、具体的にオートミールの食物繊維のどのような機能が糖尿病の予防や改善に効果を発揮するのでしょうか。
食後の血糖値の急上昇を抑える
糖尿病の予防や改善に大切な血糖値の上昇を抑えるために最も有効な栄養素が食物繊維です。
なかでも、水溶性食物繊維は水に溶けるとジェル状になる性質があります。体内で水に溶けてドロドロになった水溶性食物繊維が胃腸をゆっくりと進んで糖質の吸収を遅らせることで、血糖値の急激な上昇を抑えます。
また、以前は不溶性食物繊維には血糖値上昇を抑える働きはそれほどないと考えられていましたが、最近では不溶性食物繊維にも血糖値上昇を遅らせる可能性があることもわかってきました。
食物繊維が多く水溶性と不溶性のバランスの良いオートミールは血糖値の上昇を穏やかにする働きによって、糖尿病の予防・改善効果が期待できます。
余分な糖を吸着して排出する
食物繊維は人間の消化酵素で分解されないので、小腸で消化吸収されずにそのままの形で大腸まで移動します。
その後、一部は小腸下部や大腸で発酵されて短鎖脂肪酸という成分に変わりますが、大部分はそのまま便と共に排出されます。
食物繊維は腸内を移動する間に、腸内の余分な糖質を吸着して便と一緒に体外に排出します。つまり、食物繊維を摂取すると腸内で糖を吸着して血液中に入る量を抑えてくれるので、血糖値の急上昇を防ぐことにつながるというわけですね。
食物繊維は糖だけでなく、余分な塩分やコレステロール、大腸内で発生した有害物質などもいっしょに吸着して体外に排出します。そのため、糖尿病だけでなく、高血圧、脂質異常症(※)、大腸がんなどを防ぐ効果も期待できます。
※脂質異常症:血中のコレステロールや中性脂肪が多い状態。動脈硬化を進行させて心筋梗塞や脳梗塞など生命にかかわる病気のリスクを高める。
セカンドミール効果で次の食事の血糖値上昇も抑える
オートミールに含まれる水溶性食物繊維の「β-グルカン」には、摂取した食事の際だけでなく次の食事の際にも血糖値の上昇を抑える効果があることがわかっています。これを、セカンドミール効果と呼びます。
つまり、朝食でオートミールを食べると昼食後の血糖値上昇も抑えられる、間食でオートミールを食べると夕食後の血糖値上昇も抑えられるということになりますよね。
オートミールを一度食べると二度働くので、糖尿病の予防や改善により一層効果が期待できるのです。
β-グルカンはオートミールの他に、大麦、きのこ、海藻などに多く含まれています。
血糖値の急上昇を抑えるホルモンを分泌する
オートミールに含まれるβ-グルカンが発酵されてできる短鎖脂肪酸は、小腸下部や大腸に存在するL細胞という細胞を刺激して「GLP-1」というホルモンの分泌を促します。
GLP-1は、インスリンの分泌を促進させると同時に、グルカゴンというホルモン(肝臓に蓄えた余分なブドウ糖を血中に放出して血糖値を上げるホルモン)の分泌を抑えることで、血糖値の急上昇を抑える働きをします。
β-グルカンを多く含むオートミールを食べるとGLP-1の分泌が促進され、食後の血糖値の急上昇を抑えることで糖尿病の予防や改善につながる効果が期待できるというわけです。
糖尿病の予防・改善に役立つオートミールのその他の効果
オートミールに含まれるβ-グルカンには、食後の血糖値急上昇を抑える働き以外にも糖尿病の予防や改善に期待できる効果がまだまだあります。
・GLP-1が満腹中枢を刺激して食べ過ぎを防ぐ
・食物繊維が腸内をゆっくりと進むことで満腹感が持続する
・血糖値の急上昇を抑えることで、余分な糖分が脂肪に変換されて体内に蓄積することを抑制する
・基礎代謝を高めて脂肪を燃焼しやすくする
・内臓脂肪を減らす
オートミールのβ-グルカンが持つこれらの効果によって、食べ過ぎによる血糖値の急上昇や肥満を防ぐ効果が期待でき、結果的に糖尿病の予防や改善につながります。
全粒穀物で2型糖尿病の発症率が下がる研究結果も
全粒穀物の摂取が2型糖尿病の発症率を下げるという研究結果は、アメリカのハーバード大学などの研究チームやイギリスのケンブリッジ大学などのチームの研究でも明らかにされています。
これら2件の研究では、全粒穀物の摂取量が多いグループほど糖尿病の発症率は抑えられたそうです。
また、穀物は血糖値の急上昇に最も影響を与えるため、穀物を変えることで血糖値はコントロールしやすくなります。
オートミールも全粒穀物の一種なので、主食に取り入れることで糖尿病の予防や改善につながる可能性は十分にあると言えそうですよね。
糖尿病予防・改善のためのオートミールの効果的な食べ方と注意点

糖尿病の予防や改善のためにオートミールを食べる場合は、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
また、どのように食べると効果的なのでしょうか。糖尿病の予防や改善のために大切な食事のポイントに沿って解説していきます。
ポイントその1:欠食はNG!特に朝食は絶対に抜かない!
糖尿病の予防や改善のために最も注意すべき食生活のポイントは欠食をしない、つまり食事を抜かないということです。
食事を抜くとカロリーの摂取量は抑えられますが、食事と食事の時間が長くあくと次の食事の際に血糖値が急上昇しやすく、糖尿病のリスクが高まります。
特に、朝食を抜くと1日を通して血糖値の乱高下(血糖スパイク)が起こりやすくなります。血糖スパイクは血管にダメージを与える大きな要因ですが、健康診断ではなかなか見つけにくいため注意する必要があります。普段から朝食を抜かずに血糖スパイクを予防することが、糖尿病の予防にはとても大切です。
オートミールは朝食に食べると効果的
糖尿病の予防や改善のためにオートミールを取り入れる場合、オートミールは夜遅く以外はいつ食べても問題ないですが、特におすすめの方法がオートミールを朝食に食べることです。
朝食を摂ると血糖値コントロールがしやすくなることに加え、朝食で食物繊維をしっかりと摂ることで、1日を通して血糖値の急上昇を抑えられるという研究結果も報告されています。
オートミールは白米よりも食物繊維が豊富なので、朝ごはんにはピッタリ!
ただし、オートミールだけでは食物繊維をはじめ、たんぱく質、ビタミンなどの栄養素の必要量を補えないので、糖尿病の予防や改善のためには他の食材もいっしょに食べることが大切です。
朝食にオートミールといっしょに食べたいおすすめ食材
朝食はバランスよく栄養を摂ることが理想ですが、特に摂りたい栄養素はたんぱく質と食物繊維です。なかでも水溶性食物繊維は特に不足しがちなので意識的に摂るようにしましょう。
水溶性食物繊維は海藻、オクラやモロヘイヤ、納豆などのネバネバ食材の他に根菜類やいも類にも多く含まれています。
水溶性食物繊維 (g) | 不溶性食物繊維 (g) | 食物繊維総量 (g) |
|
---|---|---|---|
ごぼう | 2.3 | 3.4 | 5.7 |
納豆 | 2 | 3.9 | 5.9 |
オクラ | 1.4 | 3.6 | 5 |
モロヘイヤ | 1.3 | 4.6 | 5.9 |
なめこ | 1 | 2.4 | 3.4 |
さといも | 0.8 | 1.5 | 2.3 |
にんじん | 0.7 | 2.1 | 2.8 |
かぼちゃ | 0.7 | 2.1 | 2.8 |
ほうれん草 | 0.7 | 2.1 | 2.8 |
さつまいも | 0.6 | 1.6 | 2.2 |
大根 | 0.5 | 0.8 | 1.3 |
特に納豆は栄養価が高いうえに、血糖値の上昇抑制作用、整腸作用、抗酸化作用、血栓予防、コレステロールや血圧を下げるなどさまざまな健康効果が期待できるので、ぜひ取り入れたい食材です。
とは言え、朝からたくさんの副菜を用意するのは大変ですよね。そのような場合は具だくさんの汁物をオートミールといっしょに食べる方法がおすすめです。
根菜類やいも類、わかめに豆腐や豚肉や鶏肉などのたんぱく質を加えて具だくさんにすることで、食物繊維とたんぱく質をたっぷりと摂れます。
ポイントその2:夜遅くの食事には注意が必要
夜遅くに食事をするとインスリンの分泌量が減って、夜間から翌朝まで血糖値の高い状態が持続しやすいという研究結果があります。夜遅い食事は肥満にもつながりやすいので注意しましょう。
オートミールは白米に比べて食物繊維の量が多いため消化に時間がかかります。夕食を取ってから就寝までの時間が短いと十分に消化されずに胃もたれや胸やけ、下痢などの原因になることがあります。オートミールを夜遅くに食べることはできるだけ避けた方が良いでしょう。
夕食が遅くなる場合は食べ方に工夫を!
仕事の関係などで、どうしても夕食が遅くなってしまうことはありますよね。その場合は、食べ方に工夫をすると夜から朝にかけての血糖値上昇を抑えられるという研究結果があります。
夕方や夜の早い時間に職場でおにぎりやサンドイッチなどの炭水化物を食べ、帰宅してから遅い時間に野菜やたんぱく質のおかずを食べると、血糖値の上昇や乱高下を抑えられるというものです。
夕食が遅くなりがちな人は糖尿病の予防や改善のために取り入れてみると良いかもしれませんね。
ポイントその3:カロリーオーバーに注意して栄養バランスよく食べる
糖尿病の予防や改善のためにオートミールを取り入れても、食べ過ぎてカロリーオーバーになっては意味がありません。
摂取カロリーが少なめだからといって食べ過ぎないように注意しましょう。オートミール60gで茶碗1杯の白ごはんと同じくらいのカロリーになるので、参考にしてくださいね。
また、オートミールは栄養バランスが決して良いわけではありません。下のグラフはオートミール30gを食べた場合に摂れる栄養素の、1食あたりの摂取目標に対する割合を示したものです。



豊富に含まれている食物繊維や鉄などのミネラルでも全然足りていないことがわかりますよね。
糖尿病の予防や改善のためにオートミールを取り入れる場合は、オートミールを米化してごはんの代わりとして食べ、白ごはんを主食にする場合と同じように主菜や副菜でしっかりと栄養補給をする方法がおすすめです。
食物繊維はかなり意識的に摂る必要あり!
糖尿病の予防や改善には、血糖値コントロールのために食物繊維を特に意識的に摂る必要があります。『糖尿病師診療ガイドライン』では、1日の食物繊維の摂取量を20g以上を推奨しています。
厚生労働省の『日本人の食事基準2020』では食物繊維の1日の摂取目標量を18~64歳の男性で21g以上、女性で18g以上としているので、健康な人と同程度かやや多めということになりますね。
しかし、日本人は全体的に食物繊維が不足気味です。特に、水溶性食物繊維は不溶性食物繊維よりも摂りにくいため積極的に摂る必要があります。ネバネバ食品、根菜類、いも類などを積極的に食べるようにしましょう。
ポイントその4:食べる順番にも注意してしっかりと噛んで食べる
糖尿病の予防や改善のために血糖値をコントロールするには、食べる順番も大切です。「ベジファースト」や「ベジたんファースト」と言われるように、野菜→たんぱく質→糖質の順番で食べると血糖値が上がりにくくなります。
具体的には、まず野菜を5分くらいかけてゆっくりと食べ切り、続いて肉、魚、卵、豆腐などのたんぱく質をゆっくりと食べ、最後にごはんなどの炭水化物を食べるという方法です。
また、よく噛んで食べることも重要です。しっかりと噛むことで信号が脳に行きインスリンやGLP-1が早めに分泌され、血糖値の上昇を抑えることがわかっています。
オートミールは食物繊維が多いので特にしっかりと噛む必要があります。噛むことで満腹中枢も刺激されて食べ過ぎも防げるので一石二鳥ですね。
まとめ:糖尿病の予防や改善にオートミールは有効!ただし過信は禁物!
糖尿病の予防や改善には、食後の血糖値を防ぐことや血糖値の乱高下を防ぐことが最も大切です。
血糖値のコントロールには主食の影響が大きいので、血糖値の上昇を穏やかにする効果が期待できるオートミールは、白ごはんよりも糖尿病の予防や改善に有効です。
ただし、薬と違って食品の効果は絶対ではなく、人によって効果が出やすい場合もあれば出にくい場合もあります。また、オートミールだけでは栄養が不足するので、他の食材をいっしょに食べて食物繊維など他の栄養を補う必要があります。
特に、糖尿病治療中や予備軍の人は主治医や管理栄養士とよく相談した上でオートミールを取り入れるようにしましょう。